当然、オレの席は一番うしろ。窓際だ。
さっきの女の子とは、対角線上に端と端。
ちょっと気のきつそうな、頭の良さそうな子やったなぁ。
席に着いたオレを何人ものヤツが
無遠慮に、もしくは盗み見るように振り向いて見る。
コラッ! オマエラ! 見せもんやないねんぞ。
オレは、そいつらの視線を跳ね返すように
真っすぐ前を見据えて、背筋を伸ばした。
「今日の日直当番は前に出て、今日の予定・目標を伝えて」
先生は自分の机の所に座り、替わって教壇にあの子が立った。
「おはようございます。今日の日直当番、出席番号・女子8番の唐西理子です。
まず、今日の目標は"授業中の私語を慎む"です。授業を妨害する
私語の発言は一回に付き、ポイント、マイナス5点です。
そして今日の予定ですが、5時間目は音楽教室に移動しての授業です。
予鈴が鳴るまでに移動を済ませて下さい。日直が教室の鍵をした後の
忘れ物は取りに戻れません。授業に必要な道具を必ず、持って行って下さい。
それから、残り10分間となった朝の会ですが、転校生の佐分利君を
歓迎する意味でもあると思うので、佐分利君にインタビューするというのは
どうでしょうか?」
「さんせーい!」「賛成!」パチパチパチ…拍手が起こる。
オレにインタビュー? ちょっとマジかよぉ。止めてくれやぁ。
リコ? リコという名前なんや。要らんこと言うてくれるなぁ。
『ワタクシ オリコウサン ダカラ リコチャン ヨー』ってか!!
まったく、どんな学校やねん。
えっ?! 前に出るの? 勘弁してくれや~。まだ拍手、続いとる…
よっしゃ~! 分かった。もう拍手、要らんて。
こうなったら、どこでも出たる。何でも聞いてくれや!
リコが、まずオレに聞いた。
「佐分利君をロング・トール・サリーの印象から"サリー"って
呼びたいけど…いいですか?」
サリー? オレが? 何でもええわ、めんどくさい。「ええよ」
「ありがとう。じゃ、サリーに質問したい人、手を上げて」
一斉に手が上がり、ビックラこいた。
キミラ…オレに何、聞きたいんや?
10分間の質問攻め。以下は、その質問内容である。
「大阪と言えば、たこ焼きですが…たこ焼きは好きですか?」男子1
(オマエはガキか?)
「たこ焼きを食べて、そんなに大きくなったんですか?」男子2
(何でやねん! アホか!)
「大人と間違えられることって、ありますか?」男子3
(しょっちゅうやし!)
「プロのバスケやバレーの選手になりたいですか?」女子1
(背が高いだけで、なれるわけないやん)
「モデルとか芸能人になりたいですか?」女子2
(なれるわけないやん! それ、嫌味?)
「家族の人も全員、大きいんですか?」男子4
(ほな、うちは巨人家族ちゅうんけぇ?)
「あのぅ…あそこにもう、毛が生えていますか?」男子5
(どんな質問やねん! ムセるやん)
「バレンタインにチョコをもらいましたか?」女子3
(うわーっ! グサッとくる質問やなぁ)
「たこ焼きを食べたこと無いんだけどぉ、美味しいの?」女子4
(むぁ~た、たこ焼きかい!)
「やっぱぁ。ポコチンもでっかいのかなー?」男子5
(テメェ、しばくぞ! なめとんのか?!)
「初恋は、もうしましたか?」女子3
(チミはねぇ、オレに惚れたん?)
「勉強で得意な科目は何ですか?」男子6
(なーんも!)
ざっと、こんな感じ。オレの答えは、想像におまかせや。
インタビュー進行役でもある日直のリコが、タイムオーバーと打ち切った。
オレが大阪弁で、フツーに喋ったからか?
授業始まりのチャイムがなる前に、早くもオレの口調を真似して
話してる、ノリのいいヤツもいた。
リコはクラス委員でもある。しっかり者みたいだ。
何人かの取り巻きもいるようだ。
"バレンタイン”や"初恋"やと、オレに質問した、ちょっぴり"深キョン"似の
女子がオレの席までやってきて、大きい声でこう言った。
「リコは"サリー"と呼んだけど…私は"ジュジュ"と呼びたいの。いい?」
何気にリコの方を見ると、思いがけず目が合ってしまった。
その強い視線にドキッ! としたオレ。
こうして"のっぽのサリー"の転校一日目が賑やかに? 始まった。
おわり 2006.9
↑ ♪ long tall sally 聴いてみてね。